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昨年11月東京生活クラブ運動グループ福祉協議会は、障がい者の就労支援の仕組みづくりをしているイタリアの「社会協同組合」を見学した。イタリアには障がい者という言葉はなく、精神,身体,知的などの障害を持つ人、アルコールや薬物依存症の人,虐待を受ける子どもや移民,獄外労働を許可された受刑者,社会的困難を抱える人,妊婦などを含め「社会的に不利益な人々」と呼ぶ。
イタリアは1978年に「どんな障がいをもっても人として尊重されるべき」という考え方のもと、精神病院をいっせいに解体し、その人々を福祉の対象とするのではなく、市民がその受け皿としてその人々を主体とする働く場を作り出したものが「社会協同組合」だ。社会協同組合は社会的弱者を対照とした活動を展開しているが、社会福祉サービスや教育を提供するA型と、就労を目的としたB型がある。B型社会協同組合は組合員の30%以上が「社会的に不利益な人々」であることが義務付けられ、通常の組合員の他に無償で活動する「ボランティア組合員」が半数を超えない範囲で認められている。ボランティア組合員は報酬は支払われないが、障害保険と疾病保険が保障される。B型社会協同組合では事業高における人件費の割合で法人税が優遇されたり,間接税の免除,当事者に対する就労奨励金の設置など、税制上の優遇策はあるものの公共的な収入の割合は少なく、市場との競争原理に晒されており、労働には社会的に通用する質の高さが求められ、事業として継続していくことに甘えは許されない。その業種は、伝統工芸・工業製品製造業が29%、ビル清掃が22%講演や緑地の清掃管理が19%、商業6%、建設業4%、農業3%、その他のサービス産業が17%となっており、その生産高イタリアの経済の1%に及ぶまでになっている。
イタリアでは小さな頃から障がいのある人が当たり前にいる「統合教育」の中で、それぞれが役割を持ち生活できる社会を作り出している。世界で最先端の高齢社会だが、高齢者も含めた社会的弱者に対してさまざまな福祉サービスを「施し」ではなく「市民の権利」として提供し、誰もが地域で働き生活している。
「やり続けることが夢の実現」という言葉に勇気付けられ、日本の福祉も施しでなく市民の権利へと勧めていきたいと考える。